コンカレントエンジニアリング
コンカレントエンジニアリング
Concurrent engineering
概要
製造業において,エンジニアリング工程を同時並行的に実施することで,早期に仕様の矛盾を解決しようとする活動。
説明
1980年代の初頭のアメリカの製造業のエンジニアリングは,厳格な職務規程とマニュアルに基づく細分化された工程間の壁によって,技術者の非協調,製品品質の低下,近視眼的な設計が横行していた。1989年末,Nevinsらはこの状況に対し,設計工程と生産準備までを含めて同時並行的に進めることを提唱し,これを「コンカレントエンジニアリング(CE)」と呼んだ。日本では,1980年代の初頭にはCEに相当する活動が行われ,TQC(Total Quality Control)も含めて製造業の躍進を支えた。Takeuchi & Nonakaはこれを紹介した論文で,前後の工程を重ねる「さしみ型」,さらに多くの工程を重ねる「ラグビー型」に言及している。日本ではバブル崩壊によりこうした活動が一時途絶えたが,ここにアメリカからCEのアイデアがもたらされ,フロントローディング,アーリソーシングなどとして再び花開いた。その後,Schwaberらは,Takeuchiらの論文に触発されて,CEのアイデアをソフトウエア開発に適用することを提案し,これをアジャイルソフトウエア開発と呼んだ。ファストトラッキングも参照。
参考文献
- Nevins, J. L. and Whitney, D. E.: “Concurrent Design of Products and Processes: A Strategy for the Next Generation in Manufacturing”, McGraw-Hill (1989).
- Takeuchi, H. and Nonaka, I.: “The new new product development game”, Harvard Business Review (1986) .
- Schwaber, K. and Beedle, M.: “Agile Software Development with Scrum”, Prentice Hall (2002), 長瀬嘉秀ほか(監修): アジャイルソフトウエア開発スクラム,ピアソンエデュケーション (2003).
最終更新日
- 2019.12.01.
- 児玉公信 (編集委員会編)