序文
本辞典の初版は,情報システムと社会環境研究会の編集によるオンライン用語辞典として,2012年4月に情報処理学会ホームページ上で公開された。同研究会は,組織体や社会の活動に必要な情報の収集・処理・伝達・利用に関わる仕組みを広義の情報システムと捉え,1984年の研究会発足以来,我が国の情報システム研究における草分け的存在として活動してきた。これまで情報システム研究に関するハンドブックや事典類は幾つか出版されてきたが,技術や社会の進化に速やかに対応できるオンライン用語辞典の必要性が高まったことから,本辞典を企画するに至った。
それから7年以上が経過し,クラウドサービスやIoT, ビッグデータの進展など情報システムを取り巻く環境は様変わりした。また,情報システム領域を含む情報専門学科カリキュラム標準の10年ぶりの改定版J17も公開された。世の中にコンピュータ用語辞典の類は多数あるものの,前述の情報システム視点に立脚した用語辞典はほかに見当たらないことから,教育コンテンツとしての必要にも迫られ,このたびの大幅な改訂となった。
第二版の編集委員会は,近年の動向に対応すべく編集委員を大幅に拡充し,2018年初頭に編成された。
編集委員会
- 編集幹事
- 阿部昭博
- 編集委員
- 居駒幹夫,石川洋,柿崎淑郎,神沼靖子,児玉公信,雑賀充宏,清水則之,辻秀一,中村太一,深田秀実,本田正美 以上,五十音順
改訂にあたっては,初版の編集方針や辞典基本構成を堅持しつつ,項目の内容見直し・増補のほか,検索インタフェースの改善に努めた。1章「情報システムの基礎」では,情報システムを取り巻く動向を踏まえて,特に重要と思われる用語を追加した。2章「情報システムの開発・保守・運用とその技法」では,ISO/IEC/IEEE 15288の2015年改訂に基づき,システムズエンジニアリングとその周辺の用語を大幅に追加した。また,各種国際標準改訂への対応として,既出項目の内容を見直した。3章では,社会で実用されている情報システムを基幹系,業務系,情報系,OA系,サービス系に分類したうえで,その代表的な情報システムについて可能な限り取り上げた。これにより,見出しも「業種別情報システム化動向」から「実社会の情報システム-分類と特徴-」に改めた。そのほか,オンライン辞典としての利便性を高めるために,関連項目の提示,スマートフォン等に対応したレスポンシブウェブデザインなど,授業で利用している学生達からの要望も取り入れた。
収録された項目は,初版からの再録項目と新たに書き下ろした項目を合わせて450件に達し、執筆者も総勢90名を超えた。初版同様すべての執筆者には,無償のボランティアとしてご協力を賜った。また,再録分と新規分の表記等の統一を図るために,専門業者による校正も実施した。これは,情報処理学会情報環境領域のプロジェクト助成によって可能となった。執筆・編集・校正などに関わられたすべての関係者に深く感謝する。
2019年12月
編集委員一同